応用資料



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非接触三次元形状の解析手法−「3D-Rugle」の活用から

○谷尻豊寿 (株式会社メディックエンジニアリング)

1.はじめに

非接触三次元計測は、20数年前にモアレ法を使って対象物の凹凸を計測したことにはじまる。10数年前になると、レンジファインダ法を使って効率よく対象物の凹凸を計測できるようになった。そしてここ数年、非接触三次元計測装置はめざましく発展し、それに伴ってさまざまな分野で三次元データのニーズが高まっている。
一方、価格の面でも計測装置の低価格が進み、三次元計測が広く普及しつつある。ここでは「非接触三次元形状データ解析プログラム−3D-Rugle」の開発秘話や、三次元データの解析手法、3D-Rugleの応用事例を紹介する。

2.3D-Rugleの開発背景

3D-Rugleを開発するきっかけになったのは、今から5年前、日本鋼管(株)が開発した非接触三次元計測装置「VOXELAN(現在、浜野エンジニアリング製)」との出会いである。VOXELAN が出力するデータのフォーマットは、装置から対象物までの距離データ(Z値)の羅列である。 つまり、二次元画像の濃度を距離に置き換えると、二次元画像と同じデータフォーマットとなり、それまでに手がけていた画像処理の手法をそのまま使えること気づいた。当時、三次元 データを扱うアプリケーションはワークステーション上で動作するものしかなく、扱うデータもCTやRIなどのソリッドデータが対象であった。非接触三次元計測装置が出力するサーフェイスデータを効率よく、しかもパソコンで解析できるアプリケーションの必要性を感じた。

■ハードの移り変わり
開発当時のOSはMS-DOSである。三次元データをオンメモリで操作できる環境ではなかった。そこで計測結果を画像処理装置EXCEL(アビオニクス社製)の画像メモリに保持することにした。しかし、8ビットの白黒画像メモリでは、負数や小数点以下の値を保持することができないという問題があった。
この問題を解決するために、カラー画像処理ボードSuperCVI(カノープス社製)を使用した。 画像メモリのRに整数値、Gに少数値、Bに符号を格納すると、-255.99〜255.99までの値を保持できるようになり、形状データの画質は格段に向上した。ただ、このボードの表示領域は640 ×400のために、2画像を同時に表示するには、1画像の大きさが320×400までという制限があった。計測データの中には512×512、240×576などもある。そこで、1120×750の表示能力を持つHyperFrameHi(デジタルアーツ社製)を使用することにした。これで表示能力・画質 とも満足できるものになったが、画像メモリに格納したデータのアクセスに、かなりの時間がかかった。たとえば、512×512の画像を三次元的に回転するだけで、約90秒かかっていた。(ちなみに3D-Rugle for Windowsでは同じ処理を9秒でできる。) 画像処理ボードを変えていくうちに、OSもWindowsに変わった。Windows95になると、簡単に大容量のメモリが扱えるようになり、画像処理を行うために特殊な画像ボードを使う必要がなくなった。ハード面の制約がなくなり、3D-Rugleは表示能力・画質・演算時間、すべての面で満足できる環境を手にした。

■3D-Rugleの歩み
Super CVIを使用していた当時、通産省の外郭団体である社団法人 人間生活工学研究センターから、採寸ソフトの開発を請け負った。この時期に、空間長や体表長、表面積などの基本的な計測機能を開発した。
HyperFrameHiを使用するようになって、アパレル分野では人体の正面から計測した画像と背面から計測した画像を貼り合わせる機能を追加し、周方向の計測を可能にした。
OSがWindows95になり、3D-Rugleとしての開発がはじまると、解析可能な三次元計測機を10機種前後に増やした。また、CADやCGとの連携を考えてSTLや,DXFやBMPなどのデータフォーマットをサポートした。もちろんWindowsの操作性を取り入れて、使いやすさにも配慮している。

3.3D-Rugleの概要

2.5次元フォーマット
データに高速にアクセスすること、データを軽量化することを基本に考えて、3D-RugleはXYZ座標のZ値(高さデータ)だけを保持して いる。このフォーマットは「2.5次元フォーマット(等ピッチ二次元格子データ)」または「Z- mapフォーマット」と呼ばれており、XY平面上の2次元配列z(x,y )に、高さデータを保持する(図1)。

図1.2.5次元フォーマット

3D-Rugleでは、高さデータと1対1に対応する写真画像も保持している。計測時に写真画像 が撮影されない場合は、高さデータからシェーディング画像を作成し、写真画像の代わりとして使う。写真画像には対象物の輪郭やほくろなど、自然のマーキングポイントがある。これを 利用すると、正確に計測点を指定できる。また、写真画像を使って計測領域をマスクするだけで、体積や表面積の計測も可能である。写真画像を見ながら計測を指示できる点は、3D- Rugleの最大の特徴ともいえる。
2.5次元フォーマットでは、2次元配列z(x, y)にz値を1つしか格納することができない。そのため、アンダーカットのある領域は表現することができないという欠点がある。これをカバーするために、3D-Rugleでは2方向の貼り合わせ(正面と後面)や、4方向の貼り合わせ(z軸まわりに90度ごとに計測したデータ)、傾斜ステージを使った3方向の貼り合わせなど、対象物の形状や計測項目に合わせた貼り合わせ機能をサポートしている。

4.解析手法

三次元計測には、指定した点を使って距離を計測するもの、表面積計測のようにサーフェイスを扱うもの、断面計測のように切り口を扱うもの、体積計測のように中身を扱うものなどがある。非接触三次元計測装置の出力データは、サーフェイスデータであるが、これをソリッドデータとして考えることで、さまざまな計測が可能になる。
たとえば表面積は、対象物の表面に微少な三角形を敷きつめ、各三角形の面積を積算して求めることができる。体積の場合は、対象物を構成するのに必要なボクセル数に、ボクセル1個あたりの体積を乗算して求めることができる。ボクセルは三次元計測の基本最小単位になる微少な立方体である。3D-Rugleでは、計測の種類に応じてサーフェイスとソリッドの考え方を使い分けている。

5.活用事例

3D-Rugleは、アパレル分野、人類学など、幅広い分野で利用されている。各分野での活用事例を紹介する。

■アパレル分野
モアレ
図2は、補正下着の未着用時と着用時に計測を行い、その着用効果を解析したものである。モアレおよび擬似カラーで表示することにより、差異を明確に観察できる。

図2.モアレ+擬似カラー

断面図
図3は2つの断面を比較した様子である。これによって、目視で観察するだけでなく、定量的なデータを取得することができる。(資料提供:共立女子大学, 間壁治子教授)

図3.断面図

■人類学分野
5面合成
歯のエナメル質の厚さは食性に適応しながら変化してきたと考えられており、人類の進化の過程を解き明かす上で重要な意味を持つ形質の一つである。そこで、東京大学の諏訪助教授らは図5(左)に示すような治具を製作し、5方向からの計測を可能にした。これによって大臼歯をアンダーカットなしに計測可能になった。(資料提供:東京大学,諏訪元助教授)

図5.形状治具と5面合成

6.今後の展望

パソコンの高性能化と低価格化にともない、3D-Rugleの動作環境も変化してきた。これまではZ値しか保持していなかったが、現在はXYZデータを使った計測もサポートしている。また、形状解析だけではなくモデリングの要求にも応えられるように、3Dプリンターへの対応もサポートしている。

表2.3D-Rugle機能一覧

機能 内容
画像サイズ 標準型(256×256)、半身画像(256×320)、全身画像(256×640)
マッチング型(512×512)、半身画像(256×320)、全身画像(256×640)
現行品は(512×512)に限定している。
インポート Vectra-H1、Artec-Eva、Kinect、VOXELAN、VIVID 910、STL、OBJ 他
画像フィルタ 平滑化処理、穴埋め処理
画像回転 直角回転、3軸回転、UVW変換
モアレ表示 高さ画像をもとにモアレ表示
擬似カラー表示 高さ画像をもとに色づけ表示
ワイヤーフレーム 高さ画像をもとにワイヤーフレーム表示
シェーディング 高さ画像をもとに陰影表示
点と平面の距離 指定点と任意平面との最短距離を計測
直線と平面のなす角度 指定線分と任意平面のなす角度を計算
体積計測 任意平面で切断した対象物の体積を計測
表面積計測 任意のマスク領域の表面積を計測
空間距離計測 空間の2点間の距離を計測
空間角度計測 2線分間の空間角度を計
2面計測 面間距離計測に吸収した機能。前後の画像を貼り合わせて、ホールデータの周囲長、表面積、体積を計測
4面計 面間距離計測に吸収した機能。前後左右の画像を貼り合わせて、ホールデータの周囲長、表面積、体積を計測
5面計測 特注機能。東西南北画像と上面画像を貼り合わせて、大臼歯を計測
隣接計測 面間距離計測に吸収した機能。ステレオ画像を貼り合わせて、円筒座標系を用いて断面長、体積、表面積を計測
マッチング度 2画像間の面間距離等の比較を行う
マクロ計測 マクロ機能を使った演算の自動化や等に対応

表3.参考文献

1 竹内芳美「パーソナル3次元CAD/CAM」工業調査会
2 谷尻豊寿「最新画像処理入門」技術評論社、1996
3 河野・諏訪・谷尻「三次元計測を用いたエナメル質厚さの評価法」画像ラボ、1998.5

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